紙を作る機械_抄紙機とは?
紙を作る機械、テレビやYouTubeとかで見たことありますか?
デッカイですよ~!
抄紙機 (しょうしき) っていうんですけどね。
だいたい8mとか、最新鋭で最大級のは12~ 13mくらいあるって聞いたかな。
このように美術の先生達に言うと、『え、そんなもんなの? 思ったほどじゃないじゃん』って、ほとんどの先生は言いますわ。
『あの~先生、長さのハナシじゃなく、“幅” が!…ですからね! 8mとか12mとかの “幅” の紙が延々つながって出てくるんですよ。ちなみに抄紙機自体の長さは…だいたい250m近くあります!』
ここまで言うと、先生方はみんなビックリします。
これが抄紙機っていうモノです。
つまり、機械がそのまま工場…と言うか、工場全体が機械っていうか…。
(実際の製紙工場には、たった1台ではなく…何台もの抄紙機が稼働しています)
『で、その紙の出てくるスヒード、最速で時速100キロですから!』
もう、みなさん絶句ですよ。
時速100㎞で出てきた紙は高速で巻き取られ、次々に巨大なロールが巻き上がります。
この抄紙機で、いろんな種類の紙が作れるんです。
まあ、最高速の時速100㎞で機械を回すのは…だいたいが新聞用紙を作る時だけらしいです。新聞用紙は紙自体が薄く、とても引っ張りに強いパルプを使ってるようですので…。
抄紙機は24時間休みなく稼働します。
ある紙を作っていて、次に別な種類の紙を作るスケジュールだとします。
普通の感覚だと、機械を止めますよね?
抄紙機は止めません。
(一度止めちゃうと、再起動させるのにものすごく手間がかかるそうです)
前の紙の原料が少なくなってきた頃に、次の紙の原料を抄紙機に投入!
すると、2種類が混ざった紙が出来てきます。
やがて、純粋な “次の紙” が出てくるようになりますから、そこからが “次の紙” の生産開始です。
その間に出てきてた “混ざった紙” は廃棄…というか古紙としてリサイクルされます。
想像も出来なかったでしょ?
ちなみに、美術で使われる画用紙や水彩紙などは、紙の表面に凹凸をつけたりする大事な工程があるため、巨大で超高速な抄紙機ではなく、小振りな抄紙機で…だいぶ低速で作っているらしいです。
美術の紙=素材として紙
美大や芸大で “素材” として紙をとことん研究してみたり、勉強を兼ねたアルバイトで製紙工場とか紙問屋で働いてみたり、卒業後に商業デザインの方面でプロになって活動してるような美大や芸大卒の人なら… “書くため専用や描くため専用の紙” 以外に膨大な種類と量の『印刷用の紙』が存在するっていう事実を実感できてるでしょうが、普通に美術の先生になっちゃった人に…これらのことをイメージするのは、ちょっと難しいかもしれません。
我々が気付かない所で大量に紙が作られ、大量に消費され、廃棄された紙の一部はリサイクルされ、また大量に紙が作られているんです。
24時間動き続ける抄紙機から時速100キロの速さで、幅が8mとか12mとかの紙が延々と作り出されているんです。
全国に何社もの製紙会社があり、その1社が何ヶ所にも工場を持ち、工場には何台もの抄紙機が動いてるんです。
(現在、約80社・約150ヶ所の工場・400台以上の抄紙機が存在するようです)
紙を消費する人や消費する企業が無ければ、いつしか日本中が紙に埋め尽くされてしまうでしょう。
作られるスピードに見合うだけの消費があるから、こんな大量に紙を作っているんです。
(実は、ケント紙の方は名刺などの印刷用としてけっこう使われてます。印刷工場に運ばれるケント紙に対して、美術用紙専門の紙問屋に運ばれるケント紙が、“微々たる量” なのです)
あ、もう少しわかりやすい例を見つけました。
日本製紙連合会によると…『日本の国民一人あたりが1年間に使う紙の量は約178㎏ (2020年) 』だそうです。
これ、実際には国民一人一人がこれだけ “買って使って捨てている” って意味じゃないんですよ。
生産された紙の総量を人口で割ったらこれくらいになった…ってこと。
消費者の手元まで来ないで…企業や工場で消費される紙も大量にあるわけだし、中には使われずに廃棄されるものもあるわけです。
それに、いわゆる普通紙だけでなく…商品パッケージや梱包資材に使われる板紙 (ボール紙や段ボール) や衛生用紙も含まれた “紙の総量” を…人口で割り算してるんです。
でも、その “生産された紙の国民一人あたりの量” である『約178㎏』に対して… “自分達が1年間に書いたり描いたりした紙” の重量を比べてみてくださいよ。
美術の世界では、そういう “特殊な紙” ばっかり使っているんだ…という意識を持っていただければ、周りから “常識人” として見てもらえると思います。
【第3回終わり】
3ダース、イジワルですねぇ。